応対の良し悪しは、本当に数字にできるのか

この記事の要点

  • 数字にできるのは「決めた観点を満たしているか」まで。良い応対そのものではない。
  • 点数を目標にすると、点を取りやすい応対に歪む。数字は手がかりであって目的ではない。
  • 数字の価値は、比較と、低い例を見つけることにある。

応対の質を数字にする取り組みは有用ですが、万能ではありません。何ができて何ができないのかを整理しておくと、数字の使い方を誤りません。

数字にできるのは、どこまでか?

「決めた観点を満たしているか」までです。必要な項目を伺えたか、避けるべき語を使っていないか、質問に理由を添えたか。こうした観点は、確認可能です。

一方で、良い応対そのものを測っているわけではありません。観点は、良い応対の一部を切り取った近似にすぎません。この区別を忘れると、点数が高いのに評判が良くない、という事態が起こります。

だからこそ、観点は自社で決める必要があります。他社の枠組みを借りると、自社が大事にしていることが抜け落ちます。

数字にできないのは、どんな部分か?

間の取り方、声の調子、相手の言葉の受け止め方。こうした要素は、良し悪しの判断に大きく影響しますが、基準として書き出すのが困難です。

また、その場の状況に応じた判断も数値化しにくい部分です。急いでいるご遺族には手短に、話したいご様子の方にはお時間を取る。どちらが正解かは状況によります。

これらは、人が聞いて判断するしかありません。数字を整えることと、聞く工程を残すことは、両立させる必要があります。

点数を目標にすると、何が起きるのか?

点を取りやすい応対に寄っていきます。観点に含まれる項目を確実に押さえ、含まれない部分は手を抜く。悪意がなくても、そうなります。

結果として、点数は上がるがご遺族の満足は変わらない、という状態が生まれます。測っているものと、目指しているものがずれる典型的な失敗です。

防ぐには、点数を目標として掲げないことです。推移を見る材料として使い、目標は別の言葉で置く。「ご遺族に二度同じことを伺わない」といった具体的な状態のほうが、目標としては機能します。

では、数字は何に使えばよいのか?

2つあります。比較と、低い例を見つけることです。

比較は、変更の前後を見るために使います。応対の言い回しを変えた、質問の順番を変えた。その前後で数字が動いたかを見れば、変更が効いたかどうかの手がかりになります。

低い例を見つけるのは、聞き返す通話を選ぶためです。全件を聞くのは無理でも、点数の低い順に数本聞けば、共通する課題が見えてきます。数字は、聞くべき通話を選ぶための索引だと考えると使いやすくなります。

何点あればよい、という基準はあるのか?

ありません。点数は観点の設計に依存するため、他社と比べても意味がありません。自社のなかでの推移だけが手がかりです。

強いて言えば、下がったときに理由を説明できる状態であればよい。上がり続けることを求めるより、変動の理由が分かることのほうが、運用としては健全です。

人の応対も同じように測ってよいのか?

注意が要ります。測られていると意識すると、行動が変わります。萎縮したり、点数のための応対になったりします。

人を対象にする場合は、評価のためではなく改善のために使うという前提を明確に共有してください。この前提が共有されていないと、数字は不信の材料になります。

AIの応対であれば、この副作用はありません。遠慮なく測れるという点で、機械のほうが扱いやすい面があります。

観点は、いくつくらいが適切なのか?

最初は3つ程度で十分です。多くすると、採点の負担が増え、結果を読む側も何を見ればよいか分からなくなります。

運用しながら、必要だと分かったものを足していく。最初から網羅を目指さないほうが続きます。

採点の妥当性は、どう確かめるのか?

明らかに良い通話と、明らかに問題のある通話をいくつか用意して、期待どおりの点数が出るかを見ます。出なければ、観点か採点の基準がずれています。

この確認をせずに運用を始めると、出てきた数字を信じてよいのか分からないまま使い続けることになります。点数が出ることと、その点数が妥当であることは別です。

結論として、数字とどう付き合えばよいのか?

手がかりとして使い、判断は人がする。この関係を保つことです。数字が判断を代替し始めると、測っていない部分が見えなくなります。

月に一度、点数の低い通話を数本聞く。それだけの運用でも、感覚だけで語っていた頃とは大きく違います。完璧な指標を作るより、聞く習慣を作るほうが先です。

数字を社内でどう共有すればよいのか?

推移とあわせて、実際の通話の話を添えてください。「今月は用件把握の観点が下がりました」だけでは、聞いた人は何をすればよいか分かりません。「こういう通話で詰まっていました」という具体例があってはじめて、行動につながります。

共有の場は、月に一度の短い時間で構いません。数字を読み上げるのではなく、1本か2本の通話について話す。そのほうが記憶に残り、応対も変わります。

最後に、数字を持つこと自体が目的化していないかを、ときどき問い直してください。指標を整えることに時間を使うより、ご遺族に二度同じことを伺わずに済んだかを確かめるほうが、実務としては価値が高い場面もあります。数字は道具です。

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