この記事の要点
- 待機手当だけを見ると過小評価になる。翌日の稼働低下と離職の費用が抜ける。
- 取りこぼした電話の費用も数える。1件の施行が失われた影響は大きい。
- 数えられない部分は「数えられない」と書く。ゼロとして扱わない。
夜間の体制を見直す際、いま何にいくらかかっているかを把握していないと、比較ができません。表に出る費用と、出ない費用に分けて整理します。
表に出る費用は何か?
待機手当、深夜の割増賃金、呼び出しに応じた手当、通信費。給与明細や経費に現れるため、集計は難しくありません。
ただし、これだけを見て「月にこれくらい」と結論を出すと、実態より小さく見積もることになります。夜間対応の費用の大半は、明細に現れない場所にあります。
まずは表に出る分を集計し、それを出発点として、以下の項目を足していってください。
翌日の稼働低下は、どう数えるのか?
夜中に起きた翌日、その担当者の生産性は下がります。打合せの質、運転の安全、判断の速さ。すべてに影響します。
正確な数値化は困難ですが、ゼロとして扱わないことが重要です。仮に半日ぶんの稼働が失われるとして計算してみる。それだけでも、待機手当だけを見ていたときとは印象が変わります。
この項目は、呼び出しの回数ではなく起きた回数で数えてください。実際には出動しなかった問い合わせでも、一度目を覚ませば影響は生じます。
離職の費用は、どのくらいか?
夜間対応の負担は、離職の理由として挙げられることの多い要素です。一人辞めたときにかかる費用は、採用の広告費、面接の工数、教育の期間、その間の欠員による負担を合わせると、相当な額になります。
この業界では、経験のある人材を採ることが難しい面もあります。辞めた人の代わりがすぐに見つかるとは限らないという前提で数えるべきです。
数年に一人という頻度でも、一件あたりの金額が大きければ、月額に均せば無視できない額になります。
取りこぼした電話は、どう数えるのか?
ここが最も見落とされる項目です。夜間に取れなかった電話が何件あるかを、把握している会社は多くありません。着信の記録が残らない仕組みだと、そもそも数えられないためです。
ご逝去の第一報を取りこぼした場合、その施行はほぼ確実に他社へ行きます。1件の施行が失われた影響は、待機手当の数か月分に相当することもあります。
まずは数えられるようにしてください。着信の履歴を1か月記録するだけで、実態が見えます。
特定の人への依存は、費用と言えるのか?
言えます。一人に集中している状態は、その人が動けなくなった瞬間に体制が崩れるという意味で、潜在的な損失を抱えています。
体調を崩す、家庭の事情が生じる、辞める。いずれも起こり得ますし、起きたときの影響は突発的です。備えがないことは、費用として計上されないだけで、費用がないことを意味しません。
まとめると、何を数えればよいのか?
| 項目 | 数え方 | 明細に出るか |
|---|---|---|
| 待機・深夜手当 | 給与から集計 | 出る |
| 翌日の稼働低下 | 起きた回数 × 半日相当 | 出ない |
| 離職の費用 | 採用・教育の費用 ÷ 期間 | 出ない |
| 取りこぼし | 着信記録から件数 | 出ない |
| 属人化のリスク | 数値化困難 | 出ない |
数えられない項目は、どう扱うのか?
「数えられない」と明記してください。ゼロとして扱うと、比較の結果が歪みます。表に載せておけば、判断する人がそれを踏まえて考えられます。
とくに属人化のリスクは、金額にできませんが、経営判断としては重い要素です。数字に落とせないからといって、議論から外すべきではありません。
比較するとき、何に気を付けるべきか?
仕組みを導入しても、費用がゼロになるわけではない点です。お迎えには人が出ます。減るのは待機の負担であって、出動そのものではありません。
正しい比較は、「いまの費用」と「導入後の費用 + 仕組みの費用」です。前者に取りこぼしや稼働低下を含めていないと、比較になりません。
まず何から始めればよいのか?
1か月、記録を取ってください。何時に何件鳴ったか、誰が起きたか、出動に至ったか、取りこぼしたか。この4項目だけで、議論の土台ができます。
記録がないまま議論すると、感覚と印象の応酬になります。数字は、正しさより共有可能性のために取ると考えてください。
1か月ぶんの記録があれば、費用の試算も、体制の見直しも、具体的に進められます。
費用の話は、誰と共有すべきか?
夜間対応を担っている本人と共有してください。数字が見えると、負担が正当に認識されていることが伝わります。逆に、経営だけで数えて結論を出すと、現場は「勝手に決められた」と受け取ります。
共有すると、記録には現れない実態が出てきます。「この時期はもっと多い」「この曜日に集中する」。こうした情報は、当事者からしか得られません。数字と現場の感覚を突き合わせてはじめて、判断の材料が揃います。
数字が出たあと、何をすればよいのか?
比較の相手を決めます。いまの体制を続ける場合、外部に委託する場合、仕組みを入れる場合。それぞれについて、同じ項目で費用を並べてください。
並べる際、項目を揃えることが要点です。片方には取りこぼしを含め、もう片方には含めないといった比較は、結論を歪めます。数えられない項目は、どちらの列にも「数えられない」と書く。それが公平な比較の形です。
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