通話データが海外で処理されると、何が変わるのか

この記事の要点

  • 「保存していない」と「国外に送っていない」は別。まず自社の処理の実態を把握する。
  • 確認すべきは3点。どこで処理されるか、保存されるか、学習に使われるか。
  • リージョンを選べるサービスもある。選べるなら国内を選ぶ方針を持っておくと判断が早い。

音声認識やAIの応答生成を外部のサービスに任せる場合、通話の音声や文字起こしが国外で処理されることがあります。ここでは、実務として何を確認し、どう決めるべきかを整理します。制度の適用については専門家にご確認ください。

そもそも、どの時点でデータが外に出るのか?

音声を文字にする工程と、応答を組み立てる工程です。どちらも高度な計算を必要とするため、外部のサービスを使うことが一般的です。その際、音声や文字が事業者のサーバへ送られます。

気付きにくいのは、この送信が「録音」とは別だという点です。録音していなくても、処理のために送信されていれば、データは外に出ています。「保存していないので大丈夫」という説明は、この点を取りこぼしています。

まず確認すべきは、自社の通話がどの経路をたどっているかです。契約している事業者に、処理の流れを図で示してもらうのが確実です。

何を確認すればよいのか?

3点です。この3つが揃えば、説明もできますし、判断もできます。

確認することなぜ要るか
どこで処理されるか国内で完結するか、国外に出るか
保存されるか処理のあとサーバに残るか
学習に使われるか他の用途に転用されないか

3つ目は、契約の条件によって変えられることがあります。既定では学習に使われるが、申し出れば除外できる、といった形です。既定のまま使わないという姿勢が、この分野では効いてきます。

国内で処理できるなら、そのほうがよいのか?

説明が簡単になる、という実務上の利点があります。ご遺族への告知も、社内の方針も、国内で完結しているほうが整理しやすい。トラブルが起きた場合の対応も見通しが立ちます。

一方で、選択肢が狭まったり、費用や性能で不利になったりすることもあります。何を優先するかを決めておくことが、この判断の要です。

リージョン(処理を行う地域)を選べるサービスもあります。選べるなら国内を選ぶ、という方針をあらかじめ持っておくと、サービスごとに悩まずに済みます。

ご遺族には、どう説明すればよいのか?

簡潔に事実を述べます。国名や事業者名まで含めるかは判断が分かれますが、「外部の事業者のサービスを介して処理している」という事実は伝えるべきです。

深夜の電話で長い説明はできません。冒頭の案内は短くまとめ、詳しい内容はウェブサイトのプライバシーポリシーに記載しておく。この二段構えが現実的です。

重要なのは、告知の内容と実態が一致していることです。ポリシーに書いてある処理と、実際に使っているサービスがずれていると、告知した意味がありません。サービスを変更したら、記載も見直してください。

部分的に国内で処理する、という選択はあるのか?

あります。工程ごとに事業者を分けられる場合、機微な部分だけ国内で処理する構成が取れます。たとえば、同意の確認までは国内で完結させ、その後の会話だけ外部に渡すという形です。

この構成の利点は、同意をいただく前の音声が外に出ないことです。「外部処理に同意していただく会話そのものが外部に送られている」という状態を避けられます。

設計としては複雑になりますが、説明のしやすさは大きく変わります。検討する価値のある選択肢です。

事業者を選ぶとき、他に見るべき点は何か?

契約が終わったときにデータがどうなるかです。解約後に消えるのか、こちらから消せるのか、返却されるのか。解約時の条件は、契約時にしか交渉できません。

あわせて、事故が起きたときの通知の取り決めも確認します。漏えいが発生した場合に、いつまでに、どのように知らせてもらえるのか。知らされなければ、こちらは対応できません。

社内では、何を決めておけばよいのか?

方針を一文で決めておくとよいでしょう。「選べる場合は国内リージョンを選ぶ」「学習への利用は除外する」「新しいサービスを使う前に処理の流れを確認する」。この程度でも、判断の基準としては機能します。

決めておかないと、サービスを追加するたびに一から検討することになり、結局は既定のまま使うことになります。

すでに使っている場合は、どう確認すればよいのか?

いま使っているサービスを一覧にして、それぞれについて先ほどの3点を確認します。電話、文字起こし、要約、翻訳。気付かないうちに複数の事業者を経由していることがあります。

確認の結果、想定と違っていたとしても、まず把握することが先です。知らないまま使い続けることが、いちばんの危険です。

この論点は、なぜ後回しにされやすいのか?

目に見えないからです。通話は普通につながり、応対も問題なく行われます。データがどこを通っているかは、意識して確認しない限り分かりません。動いているものを疑うのは難しいものです。

けれども、問われたときに答えられなければ困るのはこちらです。ご遺族から尋ねられて即答できない、あるいは事実と違う説明をしてしまう。どちらも避けたい事態です。導入の時点で一度確認し、記録に残しておけば、その後は参照するだけで済みます。

確認は難しくありません。事業者に「処理はどこで行われますか」と尋ねるだけです。答えられない事業者であれば、それ自体が判断材料になります。

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