AIはお悔やみの言葉を、どう扱うべきか ── 言うべき場面と、言ってはいけない場面

この記事の要点

  • お悔やみは、ご逝去と分かってから述べる。用件を伺う前に述べると、事前相談の方を戸惑わせる。
  • 第一声で「ありがとうございます」と言わない。弔事の電話では場にそぐわない。
  • 重ね言葉など避けるべき表現があり、汎用の電話応対では担保されない。

葬儀社の電話応対には、他の業種と明確に違う決まりごとがあります。AIに任せる場合、この違いを設計に織り込まないと、丁寧なつもりで失礼になります。

なぜ「ありがとうございます」で受けてはいけないのか?

お電話の理由が、ご家族を亡くされたことだからです。感謝の言葉で受けると、その出来事に対して「ありがたい」と述べているように響きます。意図はそうでなくても、受け取る側の状況を考えれば避けるべき言い方です。

一般的な電話応対の教育では、第一声は感謝から入るのが基本とされています。だからこそ、汎用のサービスをそのまま使うと、この点は担保されません。業種を問わない「正しい電話応対」が、この業種では正しくないという逆転が起きます。

代わりの言い方はいくつもあります。お電話をいただいたこと自体に触れる形にして、感謝の語を避ける。細かいようですが、最初の一言は最も記憶に残ります。

お悔やみは、いつ述べるべきなのか?

ご逝去だと分かってからです。名乗った直後に述べてはいけません。かけてこられた方が、事前相談のご検討中かもしれず、ご親族の危篤のご相談かもしれないからです。

用件を伺う前にお悔やみを述べると、そうした方は「何か誤解されている」と感じます。悪気なく相手を戸惑わせる典型です。順番を守るだけで避けられます。

逆に、ご逝去だと分かったのにお悔やみに触れないのも冷たく響きます。述べる・述べないではなく、述べる位置の問題です。

避けるべき言葉には、どんなものがあるのか?

いくつかの類型があります。地域や宗派によって扱いが異なるものもあるため、自社の方針として決めておくことが前提になります。

ここで大切なのは、一覧を作って終わりにしないことです。実際にその語が使われていないかを、後から確認できる仕組みがあってはじめて、方針が守られていると言えます。決めただけで確認していない状態は、守っているつもりと変わりません。

AIに任せると、この点はどう担保されるのか?

2段構えになります。ひとつは、そもそも使わないように指示しておくこと。もうひとつは、使ってしまっていないかを後から検査することです。前者だけでは、必ずすり抜けが出ます。

検査の作り方には注意が要ります。単に語が出てきたかどうかで判定すると、「〜とは申しません」のような否定の文脈まで引っかかります。逆に緩めすぎると、本当の違反を見逃します。文として見る必要があります。

そして、検査そのものが働いているかも確かめておくべきです。違反がゼロという結果は、守れている場合と、検査が動いていない場合の両方で出ます。この2つは見分けがつきません。わざと違反する文を入れて、ちゃんと検出されるかを確かめておく必要があります。

声そのものは、どう選べばよいのか?

明るく快活な声は避けます。落ち着いた、やや低めの、ゆっくりした話し方が場に合います。ただし遅すぎると間延びするので、聞き取りやすさとの兼ね合いになります。

候補の声で実際に台本を読ませて、社内の複数人で聞いてみるのが確実です。文字で読む印象と、声で聞く印象は違います。とくに語尾の処理は、聞かないと分かりません。

結局、何を決めておけばよいのか?

最低限、次の4つを自社の方針として文書にしておくとよいでしょう。決めておけば、人が対応するときにも、仕組みに任せるときにも同じ基準が使えます。

決めること
第一声感謝の語を使わない言い回し
お悔やみの位置ご逝去と分かった後
使わない語重ね言葉ほか、自社で定める一覧
確認の方法実際に使われていないかを見返す頻度

決めた方針は、どうやって守り続けるのか?

方針を書いた紙があることと、守られていることは別です。実際の通話を定期的に見返す時間を、月に一度でも取ってください。数本読むだけで、方針とのずれは見つかります。

見返すときは、良かった通話ではなく、うまくいかなかった通話を選びます。うまくいった例からは学びが少なく、詰まった例には必ず理由があります。

あわせて、方針そのものも更新の対象です。地域の慣習、担当者の気付き、ご遺族からいただいたお言葉。運用しているうちに分かることがあります。最初に決めた一覧を固定したままにせず、気付きを足していける形にしておくとよいでしょう。

もうひとつ、社内で共有しておきたいのは「なぜその言い方なのか」です。理由を知らずに一覧だけ渡されると、書かれていない場面で判断できません。ご遺族の状況を想像すればどう言うべきかが分かる、という形にしておくほうが、結果として一覧よりも広く効きます。

言葉づかいは、突き詰めればご遺族への敬意の表れです。仕組みに任せる部分が増えても、その敬意まで委ねてしまわないよう、方針は自社の言葉で決めておくことをお勧めします。

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