宿直と当番制、続けやすいのはどちらか ── 人が辞めない体制の考え方

この記事の要点

  • 宿直と当番制の違いは「拘束されている場所」であって、休めなさは大きく変わらない。
  • どちらも、断らない人へ寄っていく。属人化は、その人が回っているあいだは見えない。
  • 続くかどうかの判断軸は「一人抜けても来月の勤務表が組めるか」の一点。

夜間対応の体制として、泊まり込みの宿直と、自宅で待つ当番制があります。どちらが良いかという議論はよくありますが、比べるべきは快適さではなく続けられるかどうかです。

宿直と当番制は、そもそも何が違うのか?

違うのは拘束されている場所です。宿直は会社にいる必要があり、当番制は自宅にいられます。ただし「鳴るかもしれない状態」は同じです。

そのため、休めなさという点では大きく変わりません。自宅にいても、お酒を飲めず、遠出できず、寝ても浅い、という状態は続きます。家族と同じ食卓についていても、携帯を気にしている。この「そこにいるのに、いない」状態が、当番制のわかりにくい負担です。

一方の宿直は、負担が目に見えます。会社に泊まっているので、本人も周囲も「大変だ」と認識できます。見えている負担は改善の対象になりますが、見えない負担は放置されがちです。この差は、体制を見直すきっかけの生まれやすさに効いてきます。

疲れ方は、どう違うのか?

宿直は生活が分断される疲れです。翌日が休みでも、体内時計は戻りません。当番制は気の休まらなさが薄く長く続く疲れです。どちらが軽いとは言えず、人によって耐えられる方が違います。

宿直当番制
いる場所会社自宅
出動までの速さ速いやや遅い
疲れの出方まとまって重い薄く長く続く
家族への影響不在になる在宅だが動けない
負担の見えやすさ見えやすい見えにくい

重要なのは、この表に「どちらが良い」という欄がないことです。人によって、家庭の状況によって、耐えられる形が違います。だからこそ、一律に決めるのではなく、選べるようにしておくことに意味があります。

どちらでも起きてしまう問題は何か?

特定の人に寄っていくことです。夜に強い人、断らない人、家庭の事情が許す人へ、少しずつ割り当てが偏ります。これは悪意なく起きます。誰かが困っているときに代わってあげる、その積み重ねが偏りになります。

そして偏りは、その人が回っているあいだは問題として見えません。体調を崩したときや辞めたときに、はじめて「回らない」ことが分かります。しかもそのタイミングは選べません。繁忙期に重なることもあります。

もう一つの問題は、その人が持っている知識も一緒に偏ることです。夜の電話をいつも同じ人が受けていると、深夜の判断基準がその人の頭の中にしかない状態になります。引き継ぎたくても、言葉にされていないものは引き継げません。

続く体制かどうかは、何で判断すればよいのか?

問いは一つです。「いま夜を支えている人が一人抜けても、来月の勤務表は組めるか」。組めないなら、それは仕組みではなく、その人の我慢で成り立っています。

この問いは、実際に紙の上でやってみる価値があります。いちばん多く夜を担当している人の名前を消して、来月の表を埋めてみる。埋まらないマスが出たら、そこが会社の弱点です。埋まったとしても、他の誰かの負担が急に増えるようなら、それも同じことです。

組めない場合の選択肢は、人を増やすか、夜に人が起きていなくても済む形にするかのどちらかです。人を増やせる状況でないなら、後者を検討することになります。

夜間の一次対応を自動化すると、当番はなくせるのか?

なくせません。お迎えには人が要ります。変えられるのは「鳴るかもしれない状態で起きている時間」です。用件が分かってから起こす形にできれば、待機の質は変わります。

ここを混同すると期待外れになります。自動化が減らすのは待機であって、出動ではありません。「夜に呼ばれなくなる」わけではなく、「呼ばれるときには理由が分かっている」状態になる、というのが正確な言い方です。

ただ、その差は小さくありません。何のために起きるのか分からないまま鳴る電話と、ご逝去の第一報だと分かっている電話とでは、起きてからの動き出しがまるで違います。準備の要らない用件で起こされないだけでも、夜の負担は変わります。

体制を変えるとき、現場にどう説明すればよいのか?

「楽になる」ではなく「何が変わって、何が変わらないか」を具体的に伝えることです。夜間の一次対応を仕組みに任せても、お迎えには出ます。そこを曖昧にしたまま導入すると、現場は「話が違う」と感じます。

伝えるべきは3点です。第一に、鳴るたびに起きる必要はなくなること。第二に、ご逝去の第一報では今までどおり出動が要ること。第三に、取りこぼしが記録に残るようになるので、体制の議論が感覚ではなく数字でできるようになること。

もう一つ、現場が気にするのは「自分の仕事がなくなるのか」という点です。夜間の一次対応を仕組みに任せることは、担当者の役割を減らすことではありません。減るのは待機の時間であって、ご遺族と向き合う時間ではない。ここを最初に共有しておくと、導入後の受け止め方が変わります。

説明の場では、決めたことよりも決め方を共有してください。なぜこの体制にしたのか、何を見て判断したのかが伝われば、次に状況が変わったときにも同じ考え方で見直せます。

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