ペット葬儀にも、深夜の第一報があります。ご家族にとって、その悲しみの深さは人の葬儀と変わりません。
そう考えて、私たちは人の葬儀向けに作った会話設計を、そのままペット葬儀に流用しようとしました。結論から言えば、流用できない箇所がいくつもありました。この記事では、その違いを整理します。ペット葬儀を手がけておられる方、これから始めようとされている葬儀社の方に向けて書いています。
同じだと思っていたこと
先に、共通する部分から書きます。
- 時間を選べない。深夜・早朝の連絡は同じように来ます
- 第一報を受けた事業者が、そのまま担当する。取りこぼしの重みも同じです
- 相手が動揺しておられる。言葉に詰まる、順番どおりに答えられない。会話の進み方は同じです
- お迎えが必要になる。ご自宅か動物病院へ伺うという業務も同じです
会話の骨格──用件を伺い、お気持ちを受け止め、必要なことを伺い、確認し、次の段取りをお伝えする──も、そのまま使えます。
違い1:連絡してこられるのが、飼い主様とは限らない
これが最も大きな違いでした。
人の葬儀では、第一報はご家族からです。ペット葬儀では、動物病院からの連絡という経路が存在します。診療時間外に亡くなった場合、病院のスタッフの方が飼い主様に代わって連絡されることがあります。
この違いは、会話の設計に直接効きます。
- お悔やみの言葉を、そのままお伝えしてよいとは限らない(連絡者が第三者の場合)
- お迎え先は病院、ご連絡先は飼い主様、と分かれることがある
- 飼い主様のご意向が、その場では分からない
人の葬儀の設計では、お電話くださった方=ご家族という前提が随所に入っていました。その前提が外れると、お悔やみの述べ方から連絡先の伺い方まで、順に見直しが必要になります。
違い2:宗派がない。代わりに「火葬の形式」を伺う
人の葬儀では、宗派が重要な項目です。ペット葬儀にはありません。
代わりに伺うべきなのが、火葬の形式です。
| 形式 | 内容 |
|---|---|
| 立会個別火葬 | ご家族が立ち会い、お骨上げをする |
| 個別火葬 | 個別に火葬し、ご遺骨をお返しする(立会いなし) |
| 合同火葬 | 他のご家庭のペットと合同で火葬。ご遺骨は返らない |
形式によって、費用も日程も変わります。そしてご遺骨が返るかどうかは、後から変更できません。深夜の電話でこの判断を迫るのは適切ではない一方、伺わずに進めることもできません。
私たちの現時点の考えは、「今この場でお決めいただかなくて構いません」と明示したうえで、ご希望があれば伺う、という扱いです。選択肢を提示しつつ、決定を急がせない。人の葬儀で「約束事はAIに任せない」と整理したのと同じ線引きになります。
違い3:行政手続は「ない」わけではない
ペットには死亡届も火葬許可証もありません。ここは大きく違います。
ただし、犬だけは例外です。狂犬病予防法により、犬が亡くなった場合は30日以内に、登録している市区町村へ届け出る必要があります。あわせて、鑑札と注射済票の返納が必要です。猫やその他の動物には、この手続きはありません。
これは、飼い主様が見落としやすい手続きです。深夜の第一報で伝える話ではありませんが、後日のご案内に含めておくと親切な項目です。ケースの記録に「犬・猫・その他」の区別を持たせておけば、後から案内漏れを防げます。
※ 届出の窓口や必要書類は自治体により異なります。詳細は登録先の市区町村にご確認ください。
違い4:言葉づかいの正解が、まだ定まっていない
人の葬儀では、お悔やみは「ご愁傷様でございます」一択でよい、と現役のディレクターの方から教えていただきました。宗派による使い分けも基本的に不要とのことでした。
ペット葬儀には、これに相当する業界で共有された定型がありません。事業者によって呼び方も違います。「ご遺体」と言うか「お身体」と言うか。「亡くなられた」と言うか「お別れ」と言うか。飼い主様を「ご家族様」とお呼びするかどうか。
正直に書きますと、ここは私たちがまだ現場に伺えていない領域です。人の葬儀については1名の方にお話を伺い、それだけで設計が6か所ひっくり返りました。同じことがペット葬儀でも起きるはずだと考えています。
いま、どこまでできているか
包み隠さず書きます。
- ペット葬儀向けの案内ページは公開しています
- 会話の骨格(5段階)は、人の葬儀と共通で使えます
- ペット葬儀に固有の会話設計と、応対品質の評価基準は、まだ作っていません
現状は、人の葬儀向けの設計を流用する想定のままです。この記事で挙げた4つの違いは、いずれも流用では吸収できません。作る前に、現場のお話を伺う必要があります。
人の葬儀で私たちが学んだのは、書籍やマナーサイトを丁寧に読んでも、現場の作法は出てこないということでした。「ありがとうございます」が使えないという知識は、実際に電話を受けておられる方からしか得られませんでした。ペット葬儀でも、同じ順序で進めるべきだと考えています。
ペット葬儀を手がけておられる方へ
もし次のような点について教えていただけるようでしたら、ぜひお話を伺わせてください。
- 深夜の連絡は、月に何件ありますか。そのうち動物病院からの連絡は何割でしょうか
- 第一報で必ず伺う項目を、順番に教えてください。人の葬儀とどう違うのかを知りたいです
- お悔やみの言葉は、どうお伝えになっていますか。使わないと決めている言葉はありますか
- 火葬の形式は、いつ確認されますか。第一報で伺うのか、後日なのか
- 飼い主様が最も不安になられるのは、どの場面ですか。人の葬儀では「時間を伝えられないとき」でした
導入のご検討でなくても構いません。お話を伺うだけの形でも歓迎しております。
まとめ
- 会話の骨格は人の葬儀と共通で使えます。深夜の第一報という性質も同じです
- 最大の違いは、連絡者が飼い主様とは限らないこと。動物病院からの連絡という経路があります
- 宗派の代わりに火葬の形式を伺います。ご遺骨が返るかどうかは後から変更できません
- 犬は30日以内の届出が必要です(狂犬病予防法)。猫やその他の動物にはありません
- 言葉づかいの定型は業界で定まっておらず、私たちもまだ現場に伺えていません
ご相談ください
次のような状況でしたら、一度お話をお聞かせください。
- ペット葬儀を始めたが、深夜の連絡を個人の携帯で受けている。本業の合間に対応しており、限界を感じている
- 提携する動物病院から診療時間外に連絡が入るが、受け方が定まっていない。取りこぼしが起きている可能性がある
- 人の葬儀とペット葬儀の両方を手がけているが、受付の手順が別々になっている。整理したい
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