この記事の要点
- 夜間の着信は「件数が少ないのに、いつ来るか分からない」ため、人を張り付けるとほぼ待機時間になる。
- 携帯転送は費用がかからない代わりに、応対の質と記録が担当者個人の状態に依存する。
- 外部に任せる場合は「用件を聞き取れるか」まで確認する。取り次ぐだけでは折り返しが二度手間になる。
深夜のご逝去の連絡は、ご遺族にとって「はじめての、そして混乱した状態での一本」です。誰が受けるかを決めることは、勤務表の問題であると同時に、その一本をどう受けるかを決めることでもあります。ここでは代表的な3つのやり方を、続けやすさと取りこぼしの起きにくさで比べます。
そもそも夜間の電話は、どのくらい掛かってくるのか?
件数そのものは多くありません。現役の葬儀ディレクターの方に伺った範囲では、夜間の着信は月に数件から十数件という規模でした(お一人からのお話であり、地域や施行件数によって変わります)。問題は件数ではなく「いつ来るか分からない」ことです。月に数件のために毎晩人が待機する構造が、負担の正体です。
この性質は費用の考え方にも影響します。件数が少ないので「1件あたりの単価」で測ると割高に見えますが、実際に払っているのは待機している時間のぶんです。日中の業務が終わったあと、翌朝までのあいだ、誰かが電話を気にし続けている。その時間に価格が付いていないだけで、コストは発生しています。
もう一つ見落とされやすいのは、着信が偏らないことです。忙しい週に集中してくれるわけではなく、施行が重なっている最中の深夜にも掛かってきます。だからこそ「余裕のある人が取る」という運用が成り立ちません。
当番制(宿直)は、何がつらいのか?
いちばんつらいのは、鳴らない夜も休めないことです。鳴るかもしれない状態で眠ることは、鳴らなくても回復を削ります。翌日に通常業務が入っていれば、その削れた分は日中の仕事に持ち越されます。葬儀の仕事は、打合せにせよ式の進行にせよ、判断と気配りの連続です。睡眠の質が落ちた状態で臨むのは、本人にとっても、ご遺族にとっても望ましくありません。
もう一つは、担当が固定化しやすいことです。夜に強い人・断らない人・家庭の事情が許す人へ、少しずつ割り当てが偏っていきます。これは悪意なく起きます。そして偏りは、その人が回っているあいだは問題として見えません。体調を崩したときや辞めたときに、はじめて「回らない」ことが分かります。
加えて、宿直は採用にも効いてきます。求人票に夜間の当番があると書けば応募は減り、書かずに採用すれば入社後に辞める理由になります。どちらにしても、人が集まりにくい構造を抱え込むことになります。
携帯への転送は、費用がかからないぶん何を払っているのか?
転送そのものに大きな費用はかかりません。払っているのは応対の均質さです。同じ会社に掛けても、出た人と時間帯によって、聞かれることも言われることも変わります。ご遺族から見れば、どちらも「その葬儀社の応対」です。
また、寝入りばなに取った電話で聞き取った内容は、記録に残りにくいという問題があります。翌朝に「誰から、どこへ、いつ」を思い出せないと、結局かけ直すことになります。手元にメモ用紙がない状態で、暗い部屋で、聞いたことを覚えていられる前提の運用は、うまくいく夜とうまくいかない夜の差が大きくなります。
さらに、転送は「出られなかったこと」が可視化されません。着信履歴は本人の携帯にしか残らないため、会社として何件取りこぼしたのかを数えられない状態になります。数えられないものは、改善の対象にもなりません。
外部に任せるとき、何を確認すればよいのか?
「電話に出てくれるか」ではなく「用件を聞き取ってくれるか」を確認してください。取り次ぐだけのサービスだと、ご遺族は同じ話を二度することになります。深夜に、混乱した状態で、二度です。
| 確認すること | なぜ要るのか |
|---|---|
| どこまで聞き取るか | お名前・ご安置先・お迎え先まで聞けないと折り返しが二度手間になる |
| 誰に、どう届くか | 「メールを見ていなかった」で朝まで気付かない事故が起きる |
| 届かなかったときどうなるか | 通知が失敗したことに気付ける仕組みがあるか |
| 言葉づかいの決め事 | 弔事の忌み言葉を避ける取り決めがあるか |
| 記録の残り方 | 翌朝、担当者が経緯を追えるか |
とくに3つ目は見落とされがちです。「送りました」と「届きました」は別のことです。送信に失敗しても誰も知らない仕組みだと、電話は鳴ったのに誰も知らないまま朝になります。
3つのうち、どれを選べばよいのか?
唯一の正解はありません。判断の軸は「その体制は、担当者が一人抜けても続くか」です。続かないなら、いま回っているのは仕組みではなく、特定の誰かの我慢です。我慢で回っているうちは問題が見えず、見えたときには手遅れになりやすい。これが夜間対応のいちばん厄介なところです。
もう一つの軸は、費用を「件数」で測るか「安心」で測るかです。件数で測ると夜間対応はいつも割高に見えます。けれども実際に買っているのは、鳴らない夜も含めた取りこぼさない状態です。この見方を社内で共有しておかないと、費用の議論が噛み合いません。
まず何から始めればよいのか?
自社の夜間着信を1か月だけ記録してみてください。着信時刻・発信元・出られたかどうか・用件の4つが分かれば、どのやり方が合うかはかなり絞れます。測らずに体制だけ変えると、変えた効果も分かりません。
記録の方法は紙でも構いません。大事なのは、記録する場所を1か所に決めることです。携帯の履歴、事務所のメモ、担当者の記憶に分散していると、月末に集計できません。1か月の実数が出れば、そのあとの判断は驚くほど簡単になります。
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