この記事の要点
- 番号を押させる形式は、選択肢を理解して選ぶという作業を相手に求める。混乱した状況では負担が大きい。
- 選択肢の言葉が業界用語だと、ご遺族には選べない。
- 結局は人につながないと用件が伝わらないため、待ち時間だけが増えることがある。
「ご用件の方は1を、その他の方は2を押してください」。この形式は多くの業種で使われていますが、葬儀社の夜間対応には向きません。理由を分解すると、代替案の要件も見えてきます。
番号を押させることの、何が問題なのか?
選択肢を聞いて、理解して、自分の状況に当てはめて、選ぶ。この一連の作業を相手に求めています。日中の落ち着いた状況なら苦もなくできますが、ご家族を亡くされた直後の深夜では話が違います。
加えて、電話をかけている場所の問題もあります。病院の廊下や車の中で、片手に携帯を持ち、周囲の音を聞き取りながら番号を押すのは容易ではありません。押し間違えれば最初からやり直しです。
そして何より、この作業は「話す」よりも難しいという点です。人は困っているとき、まず話そうとします。話す代わりに操作を求めるのは、その自然な動きに逆らう設計です。
選択肢の言葉は、なぜ通じにくいのか?
業界の言葉だからです。「ご搬送」「ご安置」「事前相談」といった語は、こちら側では日常語ですが、はじめて葬儀社に電話する方には馴染みがありません。
言い換えても難しさは残ります。「亡くなられた方のご連絡は1を」と言われて、自分がそれに当てはまるかを判断するのは、当事者にとって重い作業です。言葉を選ぶだけでは解決しません。
選択肢が3つを超えると、最初の選択肢を忘れます。かといって減らすと、どれにも当てはまらない方が出ます。この矛盾は、番号方式である限り消えません。
結局、人につながるなら同じではないのか?
むしろ悪くなることがあります。番号を押させたうえで人につながるなら、ご遺族は操作の手間をかけたうえで待たされることになります。用件も、結局は人に対してもう一度話すことになります。
IVRが効くのは、選択によって処理が分岐し、その先で自動的に完結する場合です。残高照会のように、選んだ結果が即座に返ってくる設計であれば意味があります。葬儀社の夜間対応は、この形にあてはまりません。
では、どういう形が向いているのか?
話していただく形です。「どのようなご用件でしょうか」と伺い、返ってきた言葉から状況を判断する。相手に選ばせるのではなく、こちらが汲み取る設計です。
この形であれば、業界用語を理解していただく必要はありません。「父が亡くなりまして」と言っていただければ、それで用件は伝わります。
| 番号を押す方式 | 話していただく方式 | |
|---|---|---|
| 相手に求めること | 聞いて・理解して・選ぶ | 話す |
| 業界用語 | 理解が必要 | 不要 |
| 操作の環境 | 手が空いている必要がある | 不要 |
| 選択肢にない場合 | 詰まる | そのまま話せる |
それでも番号を使う場面はあるのか?
あります。確認の場面です。すでに用件が分かっていて、はい・いいえを取るだけであれば、番号のほうが確実なことがあります。周囲がうるさくて声が届かない状況では、押していただくほうが早い場合もあります。
ただしその場合も、選択肢は2つまでにとどめ、押さなくても声で答えられるようにしておくのが安全です。どちらでも進める形にしておけば、どちらかが使えない状況でも詰まりません。
担当者への取り次ぎには使えるのか?
社内向けであれば使えます。担当者に架電して「受けられる場合は1を」と押していただく形は、押す側が業務として理解している前提なので機能します。
つまり、番号方式が向くのは業務を理解している相手であって、はじめて電話する一般の方ではありません。この線引きで考えると、どこに使い、どこに使わないかが整理できます。
いま IVR を使っている場合、どうすればよいのか?
すぐに廃止する必要はありません。まず、深夜帯だけ外してみるという段階的なやり方があります。日中は問い合わせの種類が多く、振り分けの効果もありますが、深夜はほぼご逝去の連絡に絞られるためです。
そして、外す前後で「最後まで話してくださった割合」を比べてください。途中で切られた件数が減っていれば、その変更は効いています。感覚ではなく、この数字で判断できます。
音声で受ける場合、どんな案内文にすればよいのか?
短くすることです。長い案内を最後まで聞いていただける前提にしないでください。名乗り、AIが応対していること、そして「ご用件をお聞かせください」。この3つで足ります。
案内の途中で話し始められることも想定しておきます。人は案内が終わるのを待たずに話し出すもので、そこで受け付けなければ、もう一度言い直していただくことになります。
また、録音や外部処理についてお伝えする必要がある場合も、簡潔にまとめます。必要な告知を省くことはできませんが、長さは削れます。何を必ず伝え、何を後回しにできるかを整理しておくとよいでしょう。
最後に、番号方式をやめることは「自動化をやめる」ことではありません。自動で受けること自体は続けたうえで、相手に求める操作をなくすという話です。技術の有無ではなく、負担を誰に寄せるかの設計だと捉えると、判断しやすくなります。
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