この記事の要点
- 無音が続くと相手は「通じていない」と感じて話し始める。発話が重なると会話は崩れる。
- 遅延は複数の工程の積み重ね。1か所だけ速くしても体感は変わらない。
- 内容が決まっている挨拶などは、あらかじめ用意しておけば待ち時間をゼロにできる。
AI受付を評価するとき、応答の速さは見落とされがちです。しかし電話の会話では、速さは快適さの問題ではなく会話が成立するかどうかの条件です。
なぜ、少しの遅れが問題になるのか?
電話は相手の顔が見えません。無音になったとき、相手が考えているのか、聞こえていないのか、切れたのかを判断する材料がありません。そのため人は、無音が続くと「通じていない」と解釈して話し始めます。
話し始めたところに機械の返答が重なると、そこから会話が崩れます。相手が話しているのに機械が喋り続ける、途中で止まる、両方が黙る。どれも、かけている側にとっては不安な体験です。
ご逝去の連絡という場面では、この不安はより強く響きます。ただでさえ心細い状況で、応対がぎこちないと「この会社で大丈夫だろうか」という気持ちにつながります。
どのくらいの速さなら自然なのか?
目安は1秒前後です。人同士の会話では、話者が入れ替わるときの間はもっと短いことも多く、逆に考え込む場面では長くなります。機械の場合、毎回同じくらいの間で返ってくることが、かえって自然さにつながります。
2秒を超えると、多くの人が「遅い」と感じ始めます。3秒あると、相手はほぼ確実に何か言い始めます。この境目を知っておくと、どこまで作り込むべきかの判断ができます。
時間は、どこでかかっているのか?
1か所ではありません。積み重ねです。
| 工程 | 何をしている |
|---|---|
| 発話の終わりを検知 | 相手が話し終えたかどうかを判断する |
| 音声を文字にする | 聞き取った音を言葉に変換する |
| 何を言うか決める | 状況を踏まえて次の発言を組み立てる |
| 文字を音声にする | 読み上げの音声を生成する |
| 回線を通って届く | ネットワークと電話網を経由する |
ここで大事なのは、1か所だけ速くしても体感は変わらないということです。全体の合計が体感になるので、いちばん遅い工程を探して手を入れるのが定石です。
発話の終わりを待つのに、なぜ時間がかかるのか?
「相手が話し終えた」と判断するには、少し待つ必要があるからです。すぐに反応すると、相手が息継ぎをしただけのところで割り込んでしまいます。逆に長く待てば、確実だけれども遅くなります。
この見極めは、単に無音の長さだけで決めると精度が出ません。言い終わりの語尾の調子や、文として区切りがついているかといった手がかりを併せて見るほうが、自然な間で返せます。
ご逝去の連絡では、話しながら詰まる、涙ぐんで途切れる、といったことが起きます。無音の長さだけで判断すると、まだ話している途中なのに遮ってしまいます。ここは技術の問題であると同時に、応対の質の問題です。
速くするには、何ができるのか?
まず、内容が決まっている部分は、あらかじめ用意しておくことです。最初の名乗りや、同意確認の案内文は毎回同じですから、その場で音声を作る必要はありません。用意しておけば待ち時間はゼロになります。
次に、考えている間に音を出す方法があります。人が電話で「はい、少々お待ちくださいませ」と言うのと同じで、無音を埋めるだけで体感は大きく変わります。ただし多用すると不自然になるので、使いどころを絞る必要があります。
三つめは、処理を並行させることです。話し終わりを待ってから全部を順番にやるのではなく、途中まで聞き取れた時点で次の準備を始める。設計は複雑になりますが、効果は大きい部分です。
速さを測るときは、何を見ればよいのか?
平均だけを見ないことです。いちばん遅かったときにどれだけ待たせたかのほうが、体験に直結します。平均1秒でも、10回に1回4秒かかるなら、その1回で会話は崩れます。
あわせて、遅くなった通話が実際にどうなったかを聞き返せるようにしておくと、原因を特定できます。数字だけでは「なぜ遅かったか」は分かりません。
遅くなる原因は、どうやって切り分けるのか?
工程ごとに時間を記録しておくことです。全体で3秒かかったという情報だけでは、どこを直せばよいか分かりません。聞き取りに1秒、応答の組み立てに1.5秒、音声化に0.5秒、と分かれていれば、手を入れる場所は自明です。
記録するときは、通話ごとに残しておくと役に立ちます。平均だけを持っていると、遅かった通話の事情が分かりません。「その通話では何が起きていたのか」を後から追えることが、原因の特定を早めます。
外部のサービスを使っている部分は、こちらでは速くできません。その場合は、待っているあいだをどう埋めるかに切り替えます。速くできない前提で、体感を損なわない工夫をする。区別しておくと、無駄な作り込みを避けられます。
最後に、速さを追いすぎないことも大切です。相手が話し終えた瞬間に食い気味で返す応対は、速いけれども冷たく響きます。ご逝去の連絡では、ひと呼吸置いてから答えるほうが、落ち着いて受け止めている印象になります。目指すのは最速ではなく、不安にさせない間合いです。
導入前に確かめるなら、実際に自社の番号へかけて、ストップウォッチで測ってみるのが手っ取り早い方法です。資料の数値ではなく、自社の回線と環境で何秒かかるか。数回かけてみれば、ばらつきの大きさも分かります。
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